「またね」/オダ カズヒコ
 
っていた
それを説明するのは
とても難しいことだ

バーの喧騒から
たった一つだけ
音色の違った声が
ぼくの耳に届く
それを説明することができたなら
ぼくはきっと
詩人になっていたことだろう

またね
そう言って
グラスをカチンと合わせる
それがぼくとミミの関係を定義できる
唯一の言葉だということを
説明することすら
ぼくにはできない
ついぞ繰り返される
ありふれた風景の中のふたりに

また産み落とされる
「またね」と
「じゃあね」が
ホロリと床に砕け落ち
涙のように潰れては消える

ミミ
聴こえるかい?
ココロとキオクは違う
オモイデも
ココロの一部でしかない

だから
明日を約束しよう
またね
うん じゃあねってさ


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