「またね」/オダ カズヒコ
今はっきりと定義できることがある
グラスを突き出したミミに
ぼくは言った
バーの窓から見える
道端の畑に
馬鈴薯の花が開いているのが見え
ミミの目は
潤んでいた
彼女の赤いふくらみに
指を差し入れることができるのは
ぼくをおいて
他にいない
ミミの肩から
ストールがはらりと落ち
まるで砂漠に日に一本通う
満員のバスに乗ろうとして
取り残されそうになり
不安げな顔をしている
小さな少女のように見え
それがぼくが躊躇う
本当の原因だということを
まだ
何も知らない小さな女の子のように
ミミは
他の子とは
どこか違って
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