空/itukamitaniji
 


誰かの笑い声が聞こえる 僕は壇上に立ちつくしたまんま
何か気の利いたことを 言わなきゃって心の中を探すけど
そんなもの最初っからなかったんだ 分かっていたんだ
僕の右往左往する様を見て また誰かの笑い声が響いた

そしてまたいつも通り 力なくバスのシートに体を預けて
左隣の一人分の空席を ぼんやりと眺めながら思う

今はあの時吐いた言葉さえ 夢だったらと願ってしまっている
あんなに長く悩みぬいて 強く守っていた言葉だったのに


何にも嫌いになんかなっていないのに まるでそんな風に
世界は僕を仕立て上げようとする 黒か白かなんて
そんな極端な答えしか 用意する
[次のページ]
戻る   Point(2)