スロウダンサー/のら
あの頃
お前の肩や脚はとてもしなやかで
あまやかな長い髪を靡かせ
気まぐれに
そう 気まぐれに
柔らかな胸を預けては
誰とでも踊っていた
高層ビル街の端っこの 歩道橋のうえ
笑いながら 泣きながら
お前は最期のダンスを踊っていた
止めてくれ
もう止めてくれ
そんなにも 軽くて早いステップは
もう 俺には踏めやしない
そうだ こんな夜は
バラードが良い
せめてバラードにしてくれないか
琥珀を流し込み
琥珀に流され
よろり よろよろ 辿り着いた
紅いカウンターなんだ
紅く潤んだ眼を落とすだけだから
俺を許して欲しい
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