月とピアノ/大島武士
空を覆う岩戸の内側で
空の彼方に思いを馳せながら
ピアノの音を聴いていた
太陽と月に生かされ続けて
ピアノの音を聴いていた
荒ぶる神を
祭ることも 鎮めること忘れていた
小さな島国で
月の光に心を満たされて
ピアノを聴いて願い事をした
月の光は昔からずっと
炎なんて一度だって起こしはせずに
かすかな輝きで心を満たして
人々を夜ごと
もの悲しい気持ちにさせたまま
何度も優しく蘇生させていった
月は年ごとほんの少しずつ
この星から遠ざかってゆくと知って
永遠に変わらないものはないと知ったなら
空を覆う岩戸の内側で
今をなおさら愛おしく感じ
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