まだ知らない/青色銀河団
 
おとぎ話のお姫様や王子様しか
しあわせになれないと
思ってったんだよなあ
子供のころ
幸福ってはるかかなたにある理想のことだと
理解してた

そんな俺が
いつのまにやら
しあわせになっちまって
毎日をニヤニヤしながら過ごしてる

ズリイよなあ
裏切りだよなあ
子供の俺からしてみたら
妥協したとか
間違ってるとか
誤魔化してるとかって
思うんだろうなきっと

でもね子供の俺よ
おまえは
どこの誰が作ったものよりも
飛びっきりうまい料理があるのを
まだ知らない
ちょこっと音程のはずれた鼻歌が
それは素敵な賛美歌にきこえちゃう瞬間を
まだ知らない
無条件に
自分の味方がいてくれることの安心を
まだ知らない

夕方公園をひとり歩いていても
胸のおくがずっと暖かなのを
まだ知らない

冬がきて
雪が降って
一面真っ白になって
寒いねっていう笑顔の暖かさを
まだ知らないだけなんだ

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