心の庭/オダ カズヒコ
 


街を見下ろせる ガラス越しの喫茶店で
小さな椅子に腰をかけ
ふたりはよくそこで コーヒーを飲んでから仕事へいく
まだあどけない少女だった頃から
彼女を僕は知っていて

なんの変哲もない会話の中に
ふたりだけの小さな
緑に満ちた楽園があり
なにかしたことで笑いあったり
ちょっとした仕草を触れ合わすだけで
心のヒールに届くような
感情が生まれてくる

その滾々と湧き出る泉の中で
ふたりはコーヒーカップと 言葉のつぶてで過ごし
「時間だね」
そう言って 腕時計と互いの目を見つめ合わせて
店の扉を後にする

彼女が結婚したのは僕の知らない男で
とても背の高
[次のページ]
戻る   Point(2)