灯り/葉leaf
車のライトは何もない夜道にいくつもの幻想を浮かび上がらせる
標識があったり建物があったり人が通っていたり
自動車は一個の夢製造機だから
本当は自動車の前には何も存在しないのに
ライトは人を楽しませるために幻想を生み出し
人を優しく騙してくれる
窓の灯りはおしゃべりだ
もともと窓は昼間でも互いにかしましくおしゃべりしているが
夜になると部屋の住人の自慢話になる
もちろん全てはでたらめで
窓たちはそれを承知の上で笑い合っているのだ
夜ゆく人は窓のおしゃべりを見上げて愉快な気分になる
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