思いの薫り/もっぷ
 
たどり着いた秋は
なかば過ぎてゆき
振り返れば軌跡が
じぐざぐとみえた
買わなかった白旗を悔やんではいなくて
その代わりに買った鞄を
抱え込んでなみだしてみる

(泣いているわたしを好きですか

あってほしいのは
すみれの記憶だけ
望みではないものがすばしこく
忍び込まないように気をつけて

鞄を愛し続けるわたしは きっと
ひとつのまま
またふゆへと放り込まれるのだろう


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