ナマズ/salco
海底が隆起し水位が下がって
エベレスト界隈が空中に生えた頃
ナマズは汽水に放り込まれて
激烈な減圧に体を硬くしていた
それから雨が際限なく降り
雷鳴をも呑むほどの洪水が引いた頃
ナマズはでっかい水たまりに取り残され
淡水の浸透圧に膨れ上がっていた
今度は晴天が続いて蒸発を重ね
雲に届かぬ水たまりはドロドロに濁った
ナマズは泥を飲んでは濾し出す労苦を重ね
馴れた頃には鱗と目玉が退化していた
彼ほど翻弄された者はなく
同時に適応者もいない
体を覆うヌメリは真水の侵入を防ぎ
弱視のぶん敏くなって第六感が生えた
ピーンと来るんだ、ピーンとね
沼底は真っ暗で
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