どうでもいい一日/Tシャツ
 
陽が傾き始めて、土手の枯れた芝生を照らした。僕はすごいことに気が付いた。枯れた芝生は黄金色に輝いていた。今日が終わる夕陽を受けて、芝生は輝いて一面が黄金になる。命終えたものがこれほど燃えるのは何故だろうかなって思う。僕はカメラを持ってこなくて良かったなって思った。きっと僕はカメラを構えてその一瞬をなんとか手に入れようと、シャッターを切っただろう。そして、写真を現像して思うはずだ。こんなものだったのか…って。きっとそんな無粋なことを感じて、今日という一日が記憶の片隅でだんだん色を失っていくことだったと思う。今日の目的地の無いツーリングの目的地は、この芝生の土手になった。僕はそれでもやっぱり不安だったから、バイクを飛ばして家に帰った。今日僕は思った。何でもない事と、家があるってことは幸せだって。
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