走る青空/砂木
 
やるから お願いだから休んでいて 父さん

女の子じゃあるまいし
と言って なにかしらしたがる父
病人でしょ と叫びたいのをぐっとこらえた
それは 言えそうで言えなかった

乗れ と父はそれでも 母を助手席に
私を荷台に乗せて いつもと同じように働きたがった
それが何に繋がるのか恐くて荷台で 青空に身を硬くした
最後の荷台から見る空だと 知りたくも無い 感じたくもない

それから また何度も手術して とうとう違う世に行った父
でも 残していった林檎畑は 母と弟達と家族や手伝いの人で
なんとかやっているよ

やりきれなくて切り倒した林檎の木々 草原になった畑も
残して頑張って 果実を実らせた畑も 今でも父が歩いている

難儀かけたなあ 手伝いに行くと いつも父が言ったお礼
まだ父に使われている気がする 参ったなあ
青空というごほうび 貰っちゃってるもんなあ
 



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