ぼくたちは静かに遊んでいた/オイタル
山峡から雲がほどかれて
青空の薄い隙間に流れ込んだ
寺の境内のジャングルジムの上を
白球は大きく弧を描いて巡り
泥田の中に澄んだ影を潜ませ
その影の中にぼくらは遊んだ
風は風のように木と枝を揺らす
境内の隅の錆びたブランコから
ぼくらの知らない友達が幾人か
青空の淵へと行方をくらました
ぼくらの知らない探偵が幾人か
足跡を探しに青空を渡って戻らない
山峡から雲は幾重にもほどかれて
数限りなく空の隙間に見失われる
入り口の側のシーソーの上で
Tシャツの王国が生まれては消えた
仕切りのせまい王城で繰り返される
確信のない裏切りと悪意のない妥協
猫は猫のように陽だまりに眠る
東の林の草薮に半ば隠れる鉄棒に
顔のない子ども達が長く列をつくる
夕暮れて幾人かさびしく列をつくる
ひとしきり鉄棒を撫でては入れ替わり
ひとしきり鉄棒を撫でては入れ替わり
山峡から雲はほどかれて谷を下り
幾筋か私たちの村へともれ落ちる
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