果物/葉leaf
 



樹に実っている果物
その皮はいったい
どれだけの労働を包んでいるのか
どれだけの音楽的な映像を
自然と科学が
ぎりぎりのところで摩擦する地点で
果物は静止し膨張する
果物は時間の流れを堰き止め
内部にため込んでいく
人や社会や歴史の流れも貯蔵していく
そうして価値とは無縁な一個の実り
葉の陰に隠れて競おうともせず
ただ落ちることのみを考えている球体
だが人は果物の宿命と意志を毀損して
果物が落ちる前にもぎ取る
果物は欺かれ商品として売られ
そのお金で僕は養われ教育を受けました
僕の命は遡ると果物に行きつく
僕の知識も遡ると果物に行きつく
市場は大量の果物と現在の僕を交換した
果物の流通が現在の僕を形成した
果物は農家の手によって
自然の領分から社会の領分へと
当初の運命から経済的な運命へと
騙され呆気にとられ
そうして僕が生きている
葉の裏に隠れてごっそり実っている果物たち
あれは僕の命だ

戻る   Point(4)