果物/葉leaf
樹に実っている果物
その皮はいったい
どれだけの労働を包んでいるのか
どれだけの音楽的な映像を
自然と科学が
ぎりぎりのところで摩擦する地点で
果物は静止し膨張する
果物は時間の流れを堰き止め
内部にため込んでいく
人や社会や歴史の流れも貯蔵していく
そうして価値とは無縁な一個の実り
葉の陰に隠れて競おうともせず
ただ落ちることのみを考えている球体
だが人は果物の宿命と意志を毀損して
果物が落ちる前にもぎ取る
果物は欺かれ商品として売られ
そのお金で僕は養われ教育を受けました
僕の命は遡ると果物に行きつく
僕の知識も遡ると果物に行きつく
市場は大量の果物と現在の僕を交換した
果物の流通が現在の僕を形成した
果物は農家の手によって
自然の領分から社会の領分へと
当初の運命から経済的な運命へと
騙され呆気にとられ
そうして僕が生きている
葉の裏に隠れてごっそり実っている果物たち
あれは僕の命だ
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