手を振った、実が落ちた/即興ゴルコンダ(仮)投稿/こうだたけみ
道の向こう歩く君に手を振ったら人様の庭先で掴んだ柿の実が落ちたのは水面を覗き込む犬が餌をくわえた自分に吠える話に似てわんと鳴けと命令する君なぜか三度回って楽しそうだからもういいや一緒に笑うと月も笑った赤イ赤イ
甲斐犬みたい黒虎毛した子猫が道の真ん中で蹲る側を自転車で通りかけたのに逃げようともしないから拾って帰りたい衝動を歩いてきた見知らぬおじさんまたはその庭の主によって押さえ込まれる痛イ痛イ
視界のすべてに丸みを与えたいフェルナンド・ボテロの絵みたいに彼は言うよ太ってるんじゃない膨らんでいるだけだって見えるものすべて角がとれ丸くなればいいあの庭のたわわなる柿みたく甘イ甘イ
だから僕は丸くなれと言いながら言葉を綴る漢字よりひらがながいいたまにはカタカナも特別なときだからね眼球に入った光が網膜に像を結んで結び目は緩く丸くいつでもほどけるようにそっと君と手をつなぐ青イ青イ
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