祈りに似ている/千波 一也
 


わたしの知らない
誰かの食事

わたしの知らない
誰かの寝息

そんなこと
知らないなら知らないで
なにひとつ困らない

そもそも
知らないことのほうが
はるかに多い

わたしの知らない
誰かの靴音

わたしの知らない
誰かの電灯

それらは
祈りに似ている

知らなくても構わないけれど
知らないままではいられない
厳しさと優しさが

そこはかとなく
祈りに似ている







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