訪ねられない朝/陽向
 





なぐさめられたままの足跡が
振り返られたことのない過去に
何事も言わぬままに付き添っている
その音だけに人々は聴き惚れている

何かあれば裏切られたと言う 何もなくても自矜する
物憂さに唆されて美しいことを言いそんな自分に恍惚とする
そんな自分に呆れた言葉たちは去っていき
その後ろ姿を僕は名残惜しそうに眺める

自分は自分を一番知っている 
でもその自分は世界で一番自分を知らない
もしも知ってしまったら もう何も知る必要がなくなるから
僕はいつまでも知らないでいることを祈りながら 今日もまた知り尽くして 朝まで眠る

君の顔を洗った時 なにもないと
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