あのときガス管を咥えた純白のネグリジェのあなたに/草野大悟2
イチョウが裸になるころだった。
あなたは、白く横たわっていた。
せまい台所のカーペットのうえに。
口にガス管が咥えられていた。
明け方だったとしか記憶にない。
おれは
そのころ
東京から帰ったばっかりの
塾の非常勤講師だった。
収入は日払いで、不安定極まりない暮らしが続いていた。
毎月きちん、きちんと収入のある公務員の家庭に育ったあなたには
耐えられなかったのだろう
ある日
初めて会ったときのような鋭い眼差しであなたは
おれを射すくめたのだ。
おれの中のナニカが
切れた
右手があなたのひだり頬にとんでいた
一瞬のことだった
あなたは大きな瞳をもっと
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