すくう/大覚アキラ
救う
と
掬う
は
なぜ同音なのでしょう
溺れかけの金魚を
掬い上げて
救いました
いやいや
待てよ
金魚が溺れるわけがない
慌てて水に戻したら
金魚は一目散に逃げました
薄ら寒い私の首筋には
救ったはずの金魚が巣食って
まるで襟巻きのように
ぐるぐると首筋を回遊し
不細工な尾びれで水を弾く音が
耳障りでならないんです
しかも
襟巻きみたいに温かくはないので
今日みたいに寒い日は
身体中が凍えるようです
そうか
寒いんだね
耳元で誰かがそう囁いて
首筋の金魚を
そっと掬ってくれました
掬われたのは
私で
救われたのも
私でした
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