一瞬に輝く/田園
「後悔はしていない
海原はどこまでも広がっていく」
と
それは男の夢
私という女はその男を捨て
今は小さな小屋に住んでいる
どこまでも広い空を
四角い窓の外に出て
見る そして
今日の糧を有り難くも頂戴している
それが私の労働のはじまり
孤独が
絶望が
私を支配した時代があった
男はその時すでに夢に向かっていて
私をふり返る事は無かった
私は一人だった
足掻いた
笑われまるで肥溜めで溺れているような
そんな時代だった
私はただ死ぬのが怖くて恐ろしくて
生命を必死で酷使した
吐きたくなっても
泣きたくなっても
大げさだと笑う“彼
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