「雨のはなし」 /キキ
 


右の手でそっと手渡された帰りの切符を
ふたたび改札を抜けるときに
駅員さんを呼び止めて持ち帰ってもよいかとたずねる
ああ
そうすればよかったといまになって思う



夜の続くかぎり雨は降る
傘の色をしているGhost
全力で信じる、愛していた、という響き
けれども眠ったふりをとおす
わたし自身のため

影を追わずに
夜が終わるのを待つ
いつか誰かに雨のはなしをする
傘をさせば思い出す
雨のはなしには終わりがない
傘さえあればひとりで帰れる
わたしはひとりになる
誰かと会う
会って雨のはなしをする
影は雨になって降ってくる
そして傘をさす
 わたしはひとりだ
  昨日はまだ続いている
   手放した切符
       わたしのGhost、 雨のにおい。雨のにおい。雨のにおい。ほんとうはもう忘れてしまった雨の



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