長月にすむ/千波 一也
 


さほど
離れてはいないところ、の夏

されど
懐かしさがにじみ始める、夏



夕暮れを
言葉で描いてみるけれど

この手に握る貧しさが
あらわになるだけ



秋風はみえざる火

この身を清涼に燃やし尽くして
灰ならずこころを散らす



すむべきところ、は
選べない

それは生まれ落ちたときから
長月、と定まっている








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