曼珠沙華/藤原絵理子
畦道は緋毛氈 緩やかに
尖っていた葉を 柔かな色に変えて
稲穂は黄金色に 垂れた頭が揺れる
埋もれてしまえば 高い空はあの世へ
お寺へ続く 暗い石段の両側で
「死人花」と嚇された 幼い子供は
影も形も消えうせた 夜が暗闇だった彼方に
美しかった 畏れを抱く心と一緒に
真っ赤な冠を揺らせて
黒い蝶が口吻を伸ばす 薄暗がりに
いくつもの魂が待っている その接吻を
手を合わせて 目を閉じると
法師蝉の遠慮がちな声 最後の鳴き声
あたしは祖父母に どこかで寛恕を求めている
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