虫の定義/佐々宝砂
 
虫とはなんぞやという定義からはじめたら
いくら秋の夜が長くても朝が来てしまう
かといって
わたしもあなたも虫のようなものである
地球からみたらダニがたかっているようなもんだ
と知ったふうなことを言ってみれば
隣の和室の障子でチャタテムシが騒ぐ
小豆研ごうか人とって食おかなどとはいわないが
あるいは古代中国では虎まで虫扱いしたんだぜ
と書棚の李徴が怒り出しそうなことをつぶやけば
荒れ果てたわたしの庭でアオマツムシが鳴く
以前はあんなもんいなかったのにいつのまにか住み着いた
あやつらとわたしは間違いなくちがうイキモノだよ
とホモ・サピエンスらしい意地を張って焼酎を含めば

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