柿/
chiharu
秋が来ていた
遠い遠いところから
この家のどこからか
そっと耳を澄ますと
秋がわたしを呼んでいた
遠い遠いところから
あの日と同じ声がした
呼ばれるままに
仏間の襖を開けてみると
「…あぁ、やはりあなただったのですね。」
秋が来ていた
あなたの好きな秋がそこにあった
目を閉じ、手を合わせ
あなたは記憶になってゆく
たまらなく寂しくなって
柿をそっと手の中に包んだ
もうすぐ、あなたの命日がやって来る
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