立ち止まる子供/まーつん
 
 彼は詩人を
 気取る者

 内なる黄金を仄めかす
 持たざる者の、負け惜しみ

 だが
 言葉の剣が錆びついて
 振り回す手つきも憶つかず
 悪戯に、心の生傷を
 増やすだけ

 昼は
 空っぽの酒瓶を
 飲み口から覗き込み
 色硝子越しに浮世を眺め

 夜は
 枝の上で
 道草を食う鴉に
 世迷言を投げつける

 道行く人々を
 上目使いに眺めつつ
 開く気もない口の中に
 呪詛を転がす、飲んだくれ

 こんな
 野さぐれた男にも
 感性豊かな時代はあった

 総てがまだ
 始まりだった頃

 子供たちは
 傾けた小箱から
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