傷/葉leaf
 



あるいは、私は人里から山を一つ越えたところにある渓流の脇を何も考えずに歩いていた。落葉樹が思い思いに枝を伸ばし、太陽は私の上に斑点を作っていた。渓流が川底の段差に応じて流れ落ちる音のほかには、静寂が辺りを包んでいた。静寂ではなく沈黙だったのかもしれない。川の水は硬そうな表面を見せながら小さな波を立ててどんどん流れていき、川の容積はその小さな部分でも人を何人も収容できた。歩きながら不意に私は渓流の沈黙が言わんとしていることに気付いた。この渓流は私の傷である、と。人との交わりから離れたところにひっそりとしかし大きな容積で存在し続け、どこまでも流れることをやめず、私が完全に乾いてしまうことを
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