九月の継目/ゆきむし
その日私は夜と昼の間に降り立った
るこう草の紅い蔦のこみちをゆくと
灼ける陽光と胸にすうっと染み入る九月の風が
わたしを空から遠くした
蕾をつけた朝顔にも唐突に終わりは来る
細いトンネルを抜け
秋明菊の揺れる坂を下ると
自転車の銀輪がキラキラと反射した
小さく夏の飛び込む音が
鼓膜の裏っ側でパシャンパシャンと反響する
意識が遠のくように眠りに吸い込まれそうになる
水面に魚の影が光って
わたしは夢中でそれを掴まえようとする
その時とつぜん雨雲がやって来て水面にそれはポツポツとやって来て
さっきまで透けていた水面は突然真っ暗になってしまった
投げやりに瞼を開いて顔を上げると
空はさらに遠のいて
一気にわたしを現実に引き戻した
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