極夜/草野大悟2
頭のなかで
ひっそり ねむっていた蝉が
摘出された冬
生まれかわったあなたがいた
ころがっているだけの生をえて
ゴロゴロ ゴロゴロ ゴロゴロゴロゴロ
交換される下半身
望みもしない臍から注入される栄養剤と薬
日になんども鼻腔をつらぬくカテーテル
吸引される命の残渣
せめてあなたの前でだけは
ただ笑うだけの鬼になろう
そう決めた
どこにも行きようのないふたりが
しらじらと物語をつむぐ暮らしに
少しばかり倦んできたのは
時の必然かもしれない
煮詰まった空
真夏の占いで
ぼくらの名前は
絶句するほど神に見
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