.…のために/イナエ
ぼくらが産まれたころ
産めよ増やせよ
政府の方針として人間の出生を奨励した時代があった
早く言えば 粗製濫造
ぼくら乱造された人間はお国のために死ぬこと
それが名誉だと…
他に役に立たない人間であるかのように
死ぬことだけが立派なことだと育てられた
大人になったころに
政府が決めた方針は
産児制限・優生保護法
平たくいえば 出来損ないの人間はいらないということか
だが ぼくは
生きることは…のために死ぬことだとたたき込まれていた
国のため 会社のため 家族のために
すべてが 他者のために 目一杯働いて死ぬこと
死ぬために働いてさぼることを知らない人
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