スープじゃない/陽向
―高級な食べものは普段食べなれていない人には、口に合わないのだ
道端に小柄なおばあちゃんが二人坐っている。
一人は覇気がなく、目の前の木を眺め、
もう一人は、風に逆らうように、大またを広げ、木の根を見ている。
その光景を一人の若者がいぶかしげに眺め、
まだ人生の「じ」も知らない、自分の人生を振り返り、
「人間は見た目が衰えるにつれて、心が若返るのだ」
などと、やはり人生の「じ」も分からないがゆえの、
「人生」を自まん気に見抜いた目をして、
そこを通りすぎるのである。
そんな若者が今、頭に浮かんだ想いはとても悲惨であった。
「もっと若く、なりたい」
苦痛にむしばまれている若者の叫びは、
高級な食べものをたべても、おいしいと思わなくなった
二人のおばあちゃんが感じ取り、
「若いうちしか出来ない事があるからねぇ」
と、人生を振り返りながら、つぶやいた。
勿論その声は、若者には届かなかった。
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