ただ老いて死ぬ事/yamadahifumi
私の人生が終わっていく時
私は私が得る事のできなかった様々の事を思い出すだろう
それはあるいは夏の微風や、春の穏やかな午後
精悍な顔した少女の後ろ髪や冬の枯葉の匂いや
病床にいる私自身に注がれる生命の滴
今、私は静かに老いて死んでいこうとする
老いて死ぬという事がこの二十一世紀にあっても
何千年と変わらないようなシンプルな事実だという事は一体、どういう事か
ありとあらゆるテクノロジー・技術・戦争・経済・政治・様々なイデオロギーなど
これまで人間が積み上げてきた全てのもの、そして私の生涯をかけた努力それら全てを足しても
それは私が今死ぬ
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