白夜/草野大悟2
 
頭の中に眠っていた蝉が摘出された冬
ぼくは石になった

意識は確かにあるし 五感もしっかりしている
でも
転がっている

新しい臍から注入される食事と薬
定期的に交換される下半身
ゴロゴロ ゴロゴロ
石のかなしさよ
            
ぼくをのぞき込みながら
鬼のように笑う 君

どこにも行きようのない石と君とが     
白々と物語を紡ぐ日常に少しばかり倦んできたのは
時の必然かもしれない

煮詰まった空

真夏
ぼくらの名前は
絶句するほど神に見放されていることを知った
[次のページ]
戻る   Point(2)