空の白クマ/鈴置友也
 

とととととと、とと、ととと

ラジオの周波数を雨音にあわせる
ちいさな水滴が上空四万メートルを落下してゆく
かぜに巻かれて空を泳ぎながら引力にひかれて
くっつきあって離れあって目に見える雨粒となり
かすかに酸をふくんだ水玉が
パラソルの黒に浸透してゆく

ととと、ととととと、とと

虚空をすべるひこうきの空中滑走路は
ぼくらには見えない霧のこまかな雲の糸でできてる
空にむかって口をあけた子どもたちに
雨粒はそっと雲の味をおしえてくれる

とと、とととと、とと

まっしろい境界まっしろな視界
雷をふくんだまっ黒な白が
大地のしめりを振りはらう
雲はきっと
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