侘び錆/蒼木りん
けてゆきそうでした
なぜ今は
この扉は開かないのでしょう
光はさないのでしょう
蝶番が錆びていました
鍵は
永いこと閉めたままで
やはり錆びていたのでしょう
なぜ今は
わたしはそれを
ただ見ているだけなのでしょう
わたしは
かけがえのないものを手にした代わりに
わたしの核心でさえ
到達できず見失いそうになってしまったようです
仕方がないけれど
もうそこにずっと閉じこもっては
いられないのです
時折
こうして錆びた扉を少し気にしては
色あせてしまった世界の中を
ポロンポロン歩いているのです
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