大人になっても/無花果
信じていたものに
裏切られたとき
一瞬でも
愛しい気持ちになれた人間が
鉄の釘で
私を打ちつけるみたいに
睨む
私の知らないところで
何かが動く
昨日まで繋いでいた手は
爪を剥がされたみたいに激痛が走る
人間と人間の隙間を繋ぐ橋だった
言葉は
今の彼らには、
私に向けた凶器でしかない
優しさにふやけたこの心は
言葉の鋭い鋏で
あっさりと血を流した
これだから嫌なんだ、と
開き直ってみても
苦しいものは苦しい
悲しいものは悲しい
理論的にとらえるんだ
感情的になってはいけない
そう自分に言い聞かせたって
私は人間だったから
きっと大人になっても、
傷ついてしまうだろう。
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