黄色いキャロルのクマ/オダ カズヒコ
 


カルティエかブルガリかハリー・ウィンストンの
ダイヤの指輪だ

窓をギュイっと閉めると彼は
わたしを見て
決心が鈍ったと
そうつぶやいた

「なんのこと?」
「場末のホステスみたいだぜ」

わたしの顔をじっと見るなり
彼はそう言った

「お気の毒サマ!」

そう言うと ふたりはグッと押し黙って
車の中の空気も 
うんっと重くなった

「もうすぐね」
「え?」

そう言って彼が振り返ると
目の前にフワっと海が広がった
キャロルがスリップして止まると
夜の海が
とても静かで
綺麗だった

わたしたち・・
ここから始められる?
ハンドルを握ったままの彼はとても静かで
さっきまでの悪態が信じられないほど
きれいな横顔をしていた

そしてわたしの肩をグッと抱き寄せると
とても優しいキスをくれた

「指輪 もったいなかったね」

唇を外してそう言うと
彼はその言葉を打ち消すように・・

もっと強いキスを
わたしにくれた
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