ドングリ/殿岡秀秋
繁みの間から語りかけてくる友だち
幼いころに拾い集めたら
食べるとどもりになるよ
あの子はきっと
食べたんだよ
という子がいた
友だちの中にひとり
どもる子がいた
きみはドングリを食べたの
とは聞けなかった
ドングリを食べないようにしよう
とぼくはおもった
大人になった
ドングリを食べても
どもりにはならない
ただ渋いだけだ
夏の終りの朝に
林の間から
緑色のスカーフをまいた
マテバシィの実が
語りかけてくる
もうすぐ秋だね
なつかしい友に
めぐりあったように
ぼくはうなずく
辛いことばかりじゃないよ
そうだね
昨日街で茶色い帽子が似合う
友と語りあったよ
ぼくは微笑みをかえす
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