さよなら、お母さん。/永乃ゆち
 


あの頃わたしの精一杯で生きていた。



遠い記憶は優しいものではなかったが
大きな怪我も病気もせずに
三十年以上生きてこられた。
親には感謝すべきなのだろうが
生憎ずいぶん前から
親を親として認識できないでいる。

わたしにとって父も母も
親と言う名の他人だった。
父はわたしが幼い頃家を出て行ったので
余計にそう思う。


母は。
母は、毎日わたしに暴力をふるった。
何度も男を変え、その度家に連れ込んだ。
一日だけの時もあったし
二、三週間の時もあった。
そして一番長く続き
わたしが知る最後の男になった人は
一年以上生活を共にした。


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