レモン葬/こしごえ
レモンの青い葉の
そよそよささやくななめしたにある木陰が
独りの影に重なりつらなり
古い灰色の木製の椅子に座り
宙を見つめている無限に
くりかえされる喪失は
だれにも知られることはなく
青黒い小石のように
遠く沈黙して空ろだ
風色の映るガラスの風鈴の鳴る真夏
なんの気配もしない小道から小道へ
天秤棒をかついだ金魚売りが
つやのある波うつ声をはりあげながらしだいに消える。
電柱の視線のすみにあるコンクリートの空き地で
異次元への入口のような
陽炎はゆらぎ
小首をかしげる
おわかれですね
独り言をつぶやいた袋小路
ブロック塀で閉ざされた
正午を回った
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