ガザの犬/藤原絵理子
 

少女の頬に
ほんの少しの血が 
乾いて お祭りの
化粧のようで

当たり前のように
気にもかけなかった

からりと晴れた 暑い午後
地中海の香りを思い出して
悲しくなった

抱かれた犬は
微笑んでいる
後ろ足の片方は
なくなっている

不思議な顔の兵士が来たら
ここも良くなって 苛立つようになる
そう教えてくれた兄は 砲弾に
ばらばらに千切れて 瓦礫にこびりついた

少女も幸せそうに
微笑んでいる
不思議な顔のカメラマンに
向かって 幸せそうに

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