反射/不老産兄弟
女は使い古された
その黒い財布を拾い上げて
表面に鈍く映し出された
自分の姿を
覗き込むようにして
それはわたし
黒の中にぼやける
我に帰ると
たった少しの間とはいえ
自己愛への陶酔に
嫌悪すら覚えて
女はその黒い財布を
再び捨てる
水溜りの中へ
もう二度と
浮かんでこないよう
懐中時計にくくりつけて
飛び込むわたし
濡れた髪が乾くまで
震えながら待っているわたし
しっとりと潤った髪は
ふわりと風になびいていて
また思う
遠くから近づいてくる誰かを感じて
目の前で途絶えていくその光を見ている
自分がいとおしくて
それはわたし
光はいつでも
すぐそこまでやってきて
姿を見せては消えていって
そんな君は
僕が愛している君で
僕が愛している君が
愛しているあいつの
使い古されたその黒い財布の中に
自分の姿を
覗き込むようにして
戻る 編 削 Point(3)