君の噂を聞いた夜/AB(なかほど)
 

いくつもの季節が過ぎて
君の笑顔しか思い出せなくなっていました


田舎へ帰ったと聞いて
いくつものアルバムの中の君を探しているのですが
探しているのは笑顔ではないのです
悲しみを探しているのです

あの笑顔は
悲しみを覆いつくす笑顔で
他の誰の幸せも邪魔しないようにと
君の優しさから生まれた笑顔だったと
気付いた頃にはもう側にはいなくて

あの笑顔が作り物だとしても
出会えたことに感謝しているのに
側に居た時間に
僕は何をすべきだったのだろう


いつの写真も
君は笑顔です
離れた時でさえ
覚えてるのは笑顔で
想い出での全てで
君は笑顔なんです
胸を熱く、しょっぱい思いをさせる笑顔なんです

悲しい顔も見せてくれよ
とつぶやきながらも
くしゃくしゃになってるのは僕のほうで
握りつぶしてしまった写真の中でも
君は

やっぱり

笑顔なんですね


    
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