ナニカ/草野大悟2
 
、優太としのぶに対する暴行やいじめへの対応がどうなるのかある程度の予測がつく。特に、隠蔽を明らかにするような文書が存在し、具体的内容が判明すれば、隠蔽工作がどう展開されるのかの貴重な資料になる。
 一件目は、荒木西小学校五年の田中さやかという女の子が、自宅で首を吊って死亡した二九年前の事案だった。遺書はなく両親も学校サイドを訴えることはなかった。父親は県警の若手警部だった。第三者委員会は、全校生徒に対するアンケート調査結果や教諭達に対する聞き取り調査の結果を論拠に、いじめも教諭による体罰も認められず自殺との因果関係もない、と結論づけていた。
 二件目は、荒木中学校の野球部でキャプテンをしていた
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