ナニカ/草野大悟2
 
いの」
 野津は酔っていた。「よし」そう言って店を出た。理沙は黙ってついてきた。
 理沙は、野津の上で激しく腰を使った。野津は、理沙と自分の心の奥底に封印されているもの同士が体液を交換しているような、妙な感覚に囚われながら理沙の中で果てた。その場限りの遊びのつもりだった。これまでの女逹と同じように。理沙は、抱きたくなるような女ではなかったし、犯すことで征服欲が満たされるタイプの女でもなかった。なのに、何かに引きずられるように野津は理沙と一緒になった。野津には自分の心が、自分でも理解できなかった。
一年目に長男が産まれた。予め考えておいた五○の候補の中から、理沙は考えに考え抜いて七人分の名
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