絶対量/オダ カズヒコ
 



ただ唸り続けるケダモノには
地球の匂いが十分に染み込んでいる

生まれた瞬間に浴びた呪文のせいで
魔法がとけない

言葉がくたばるくらいの
鮮明な魂
98階のマンションから突き出した
むき出しのナイフ
動脈のように
原因のわからない血

昆虫になって
泣くことさえできたけれど
羽は世界を受け破れそうになり
森に埋もれて風を見つめた

雨が降っていた
遠くで街がクラクションと音楽で溢れている

でもそれが何なのかわからない
ぼくらは変えることのできない未来を生きている
赤い血の流れる
真っ白なリンゴだ
虚無と虚構に辿りついた都市に
唇を寄せてつぶやく

昆虫になって
泣くことさえできたのに
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