私の名前を/凍湖（とおこ）
私の名前を呼んでください。
「お嬢さん」や、「お姉さん」、あるいは「バイト」なんかじゃなくて。
私の名前を呼んでください。
父の名や、母の名、あるいは恋人の名前なんかでもなくて。
私の名前は、「おんな」ではありません。
「わかもの」でもありません。
私には、私の名前があります。
私だけの、特別なやつが。私だけを指し示すやつが。
あなたの言う
お嬢さんや、お姉さん、バイト、おんな、わかものって、いったい誰のことですか。
その人の、具体的な顔を、思い出せますか。
その人はいま、どんな表情をしていますか。
あなたの、あなたは目を見ていますか。
私に用事のあるときは、私のことを見てください。
私もあなたを見つめます。
あなたを呼ぶときは、あなたのことを。
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