いきれ/イシダユーリ
 
切り落として
 空や海や土に
 かえすという祭りです」
右端に立って右手を挙げる

一年のうち
数日だけ
思い出す
わたしのとなりのわたしは
生きているきみである
おなかをつきだしたあと
ひっこめて
口をあける
手で顔に触れて
軽くとびあがる

きみはいつ死んでもいい
生まれたくなかったと言っていい
わたしは五百年前毛皮を着て草地に立っていた
毛皮についていた肉のことを知らないと
まばたきをした
ここは 今でも
まるく 直線
きみは あの 平行
けれど
わたしは 今
季節のとば口に
ひっかかった
ひとの皮に
ついていた肉のことを
知っている
きみに それを はやく
教えたくて
わたしは
どきどき
している
わたしの
呼吸は荒く
頬は
紅潮している
はやく


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