ある日魚になった彼女/永乃ゆち
 



波打ち際で花束のような人

野にある姿は幻だったの

手の内を隠して

笑いかけるだけ

振り向いたら負けと言いながら

波に呑まれて魚と愛し合った

夕立の前に

 

それから毎晩僕の食卓に魚がのぼる

花束を添えて

僕は食べ続ける

 

波打ち際で花束になった人

野にある姿は幻だったの

つま先を磨いて

踊り続けるだけ

白い足首踊りながら

波に呑まれて魚と愛し合った

雷の前に

 

それから毎晩僕は食卓の魚を探す

花束を抱えて僕は探し続ける

それから毎晩僕の食卓に魚がのぼる

花束を添えて

僕は食べ続ける




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