境/永乃ゆち
あれはたぶん、あの世とこの世の境だったんだろう。
夕暮れに染まったけだるい空気の中。
全身が鉛のように重く
言葉を発するのも困難だった。
私は高い高い塀に囲まれた場所にいた。
その中心には古い民宿のような建物があり
私はそこで何かの順番を待って座っていた。
民宿の女将のようなおばあさんがそばに寄ってきて
『次はあんたじゃよ』
と、しゃがれた声で言った。
何が『次』なのか、分からないまま
酷く重たい体を引きずるようにしながら
そのおばあさんの後をついて行った。
木造の建物のはずなのに、連れて行かれたそこは
大きなガラ
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